艶有りゴール・ドラベルの謎



まさにカマカの黄金時代を象徴するゴールド・ラベルには、よく知られた事ですが、艶無しと艶有りの2種類があります。
かつては、艶無しゴールド・ラベルの方が古く、艶有りゴールド・ラベルの方が新しいと言われていましたが、実際には艶無しゴールド・ラベルの後期(60年代後半)にダブって艶有りゴールド・ラベルは使われていました。
これは、たまたま艶無しの紙が切れたから艶有りの紙が使われたという程度なのでしょうか?
それとも、艶有りゴールド・ラベルには何か意味があったのでしょうか?

まず、艶無しゴールド・ラベルについて調べてみると、1954年から1969年まで使われたようです。
採用された年についてカマカの記録は、1954年と書かれているものと1957年と書かれているものがありますが、現存するウクレレの仕様から1954年の方が正しいと思われます。
艶無しゴールド・ラベルがパイナップルラベルから切り替わるのは、パイナップルロゴからkkロゴに切り替わるのと同時であることから、おそらく、サム・カマカが亡くなって、サム・カマカ Jr.が生産を再開した1954年にkkロゴと艶無しゴールド・ラベルを採用したのでしょう。
カマカの資料によると1952年には工房の機材をサム・カマカの療養先へ引き上げて実質休業状態となっていたことから、この時点でパイナップル・ラベルやパイナップルロゴのデカールは処分されてしまったのではないでしょうか?
パイナップルロゴについての権利が切れたのでkkロゴを採用したという説がありますが、1968年にパイナップルロゴの商標登録の最後の更新が行われているから、これは誤りです。

ホワイト・ラベルに置き換わった時期については、カマカの記録は1969年となっており、日付入りのウクレレでも、1969年製の艶無しゴールド・ラベルや1970年初期のホワイト・ラベルが確認されているので、1969年後半というのが確実です。

1954年に登場した当初の艶無しゴールド・ラベルは右下にHawaiian Handmadeとイタリックで書かれていました。
goldlabel1

1960年代後半になると、カマカ・ジャパン(1964年設立)と区別するためか、右下の文字はHONOLULU HAWAIIとゴシックで書かれるようになります。
goldlabel3

ちなみに、1969年に登場するホワイト・ラベルは似た形状だが、U.S.Aの文字が追加されています。
whitelabel1



一方の艶有りゴールド・ラベルは60年代半ばに登場します。
カマカでは、60年代初めにスタンダードモデルに指板が付くようになり、その後しばらくしてからブリッジにサドルが付きます。
艶有りゴールド・ラベルの登場した年ははっきりしませんが、全てブリッジにサドルが付いていることから、60年代半ばだということは確実でしょう。
登場したばかりの艶有りゴールド・ラベルは艶無しゴールド・ラベルと同様右下にHawaiian Handmadeとイタリックで書かれていました。
goldlabel2
よく見ると、艶無しゴールド・ラベルと版が異なり、Hawaiian Handmadeの文字形が微妙に違い、文字の始まる位置がukuleleの文字より左になっています。
また、艶無しゴールド・ラベルやホワイト・ラベルではkamakaのaの文字がkの文字に食い込んでいますが、こちらはkとaが離れています。
さらに、艶無しゴールド・ラベルやホワイト・ラベルでは赤字で書かれたkとlの文字の下側が他の文字より突き出していますが、艶有りゴールドラベルでは全ての文字の下側の位置が揃っています。
(たまに艶有りゴールド・ラベルの紙が酸化して艶無しゴールド・ラベルと区別しにくい場合がありますが、この特徴を見ればすぐ判別できます)
これは、単に艶無しの紙が切れたから艶有りの紙を代用したという訳ではなさそうです。
カマカ・ハワイが商標登録したロゴは、艶無しゴールド・ラベルやホワイト・ラベルと同じ形をしています。
艶有りゴールド・ラベルは別な場所で作られ、商標登録したロゴの型が無かったので、真似て作ったのではないでしょうか。

艶無しゴールド・ラベルの右下の文字がHONOLULU HAWAIIと変更される1968年頃、艶有りゴールド・ラベルはその文字が書かれている部分が切り取られるようになります。
goldlabel4
よく見ると左下に赤い縦線があり、切り取られたのが判ります。
艶有りゴールド・ラベルには、艶無しゴールド・ラベルに追従してHONOLULU HAWAIIと記述を変更できなかった事情があったと推測できます。


その後、艶有りゴールド・ラベルの下側には何も印刷されていないものが登場します。
goldlabel5


そして、1970年ごろに艶有りゴールド・ラベルは消滅します。

これらの事から、艶有りゴールド・ラベルはカマカ・ジャパンで使われていた物だと推測しています。
初期のカマカ・ジャパン製には一部Hawaiian Handmadeと書かれた艶無しゴールド・ラベルが存在します。
しかし、後半に作られたカマカ・ジャパン製とはっきり分かる物は全て艶有りゴールド・ラベルです。
(カマカ・ジャパンは1970年まで存在しました)
また、カマカ・ジャパン製といわれるkeikiモデルには、HONOLULU HAWAIIの艶無しゴールド・ラベルやホワイト・ラベルの物も存在するようです。
このため、keikiモデルの一部はハワイで製造されたという説もありますが、真偽は不明です。
問題は、1960年代後半に作られた、ハワイ製か日本製か判らない物です。
艶有りゴールド・ラベルが貼られたウクレレを見ると、圧倒的にスタンダード(およびスタンダードDX)が多く、テナー、コンサート、パイナップルが僅かに存在しています。
そして、バリトンとコンサートのTikiモデルについては存在が確認されていません。
恐らく、一部にはハワイから輸入した物に艶有りゴールド・ラベルを貼って出荷したのではないでしょうか。


追記
「とど」さんがお持ちのカマカは、艶無しゴールド・ラベルですがラベルの下側が切り取られているそうです。
goldlabel6goldlabel7

艶有りゴールド・ラベルと同様に左下に赤い縦線があり、切り取られたのが判ります。
ボディ全体の写真を見るとハワイ製のように見えます。
このため、ハワイのカマカ工場に修理で持ち込まれた日本製に艶無しゴールド・ラベルが貼られた訳ではなさそうです。
もし、ハワイで製作された物に最初から下側が切り取られたラベルが貼られたのだとしたら、上記には当てはまらないタイプです。
何か、ハワイ製だとアピールしたくない事情があったのでしょうか?
艶有りゴールド・ラベルの下側が切取られたものは良く目にしますが、艶無しゴールド・ラベルでは非常にレアだというのは確かです。






カマカの謎へ戻る