ジャンボ・ボディについて


ここで取り上げるジャンボ・ボディというのは、ギブソンJ200のような、いわゆるダルマさんのような形を指します。
何故、わざわざことわるのか?と言うと、元々のジャンボ・ボディとは、現在ドレッドノートと呼ばれるような形であり、J200のような形はスーパー・ジャンボ・ボディと言われていたからです。
本来のジャンボ・ボディは、1912年にリヨン&ヒーリィ(ウォシュバーン)社が発表したLakesideというギターにJumboサイズが用意された事が元祖です。
残念ながら、通常サイズのLakesideの写真は見つかるのですが、Jumboサイズの写真が見つからなかったので、当時のカタログのスペックです。


その後、各社も真似をしてジャンボ・ボディのギターを発表しますが、何故かマーチン社は、イギリスの巨大戦艦ドレッド・ノートにちなんで、ジャンボ・ボディのギターをドレッド・ノートという名前で発表しました。
そもそも、1916年にディトソン社向けOEM製品として14本製作、1931年から自社製品としてジャンボ・ボディのギターD1、D2を製造開始しました。
マーチンに関する逸話として、ディトソン社のバイヤーがマーチンが試作した大きなギターを見て「まるでドレッド・ノートのようだ」と言った事に由来するとありますが・・・ディトソン社はリヨン&ヒーリィ社のメイン・ディラーだったので、ジャンボ・ボディのギターの存在は知っていたはずです。
むしろ、ディトソン社からマーチンへ他社で人気があるジャンボ・ボディのOEM製造を依頼したというのが真相でしょう。

一方、ギブソンは、ジャンボ・ボディのハワイアン向けギターHG24を1929年に製造開始し、1934年には、ジャンボ・ボディの通常のギターJUMBOを発表します。
つまり、ジャンボ・ボディ(ドレッドノート・ボディ)のギターを自社のラインナップに加えたのは、マーチンよりギブソンの方が早かったのですね。
しかし、マーチン社のD1、D2の後継機であるD18とD28が大ヒットしたため、現在はドレッド・ノート・ボディという名前が一般的になってしまったのです。
ちなみに、ギターの型番で、マーチンの頭にDが付くものはドレッド・ノート、ギブソンの頭にJが付くものはジャンボを意味しています。
(マーチン社のDという型番は、本来ディトソン社のOEMという意味だったと思われます・・・ドレッドノート云々というのは、後からこじつけたような気もします)

一方、スーパー・ジャンボ・ボディのギターというと、1937年に当時のカウボーイ映画スターであるレイ・ウィットリーのために、ギブソンがアーチトップギターL5をフラット・トップ化して制作したのが始まりとされています。
これが、そのレイ・ウィットリーのギターの写真です。


ヘッドのフラワーポッド・インレイやブロック・ポジションマーク、ネックエンドの形状等にL5の影響が残っています。
実は、1936〜37年製造のSJ-200(ラベルはL-5special)も数本存在しています。

ちなみに、下は1940年製L5Nです。

このギターが評判となったため、翌1938年になるとSJ200としてラインナップに載る事になりました、さらに1939年になると、弟分のSJ100も製造開始されます。

…というのが通説なのですが、実は、ギブソン初のスーパー・ジャンボ・ボディのギターは、1930年に造られた、やはりハワイアンギターのDobble-wall customでした。
このギター、実験機的な意味合いが強く、音量をかせぐためボディが2重構造で、周囲に小さなサウンドホールが開いています。


つまり、かなり前からギブソンはスーパー・ジャンボ・ボディのギターを計画していたのですが、発表するにあたって、レイ・ウィットリーの知名度を借りたのでしょう。
この件は、ギブソンが初のソリッド・ボディ・エレキを発表しようと計画して、わざわざレスポールと契約したのを思い出します。

そもそも、ギブソン初のフラットトップ・ギターであるL1は、それまでのラウンドホール・アーチトップから1926年にモデル・チェンジして制作されました。

これは、モデル・チェンジ直後の1926年製L1で、フラットトップなのですが、バックは未だメイプルのアーチバックです。

この事を考えると、アーチトップのL4を1928年にオーバル・サウンドホールからラウンドサウンドホールへモデル・チェンジした時から、フラット・トップ化しようという意図があったような気もします。

左側がオーバル・サウンドホールの1927年製L4、右側がランドサウンドホールになった1930年製のL4アーチトップ…後のジャンボ・ボディに凄く似てますよね。

さて、上述したように本来のジャンボ・ボディをドレッド・ノート・ボディと言う事が一般化したので、現在では、本来スーパー・ジャンボ・ボディと言われていた物が、単にジャンボ・ボディと言われるようになってしまいました。



<(おまけ)ジャンボ・ボディあれこれ>