J200以外のギブソン・ジャンボ・ボディ


ギブソンでは、J200以外にもジャンボ・ボディのギターを作っています。
しかし、J200の存在が大きいためか、どれも成功したモデルとはなっていません。
見た目では負けますが、J200よりも音が良い物が多いので、個人的には好きです。

最初は1939年製SJ100です。
1939年〜1943年までに139本製造されました。


ステアウェイ・ステップのヘッド、マスタッシュブリッジ、各弦アジャスタブル・サドル、エボニー製の指板&ブリッジは初期の仕様です。
さらに、通常はクルーソン・ペグですが、この個体は、同時期のSJ200と同じグローバー・インペリアルになっています。
(もっとも、SJ200はゴールドのペグですが、シルバーのペグ)

1951年製のJ185です。
J200より一回り小ぶりな16 1/4サイズで、1951年から1958年まで918本製造されました。


これは、60年代後半にギブソンの工場でブリッジを付け替えたそうで、ダウン・ベリー・ブリッジとなっています。
J200の項でも書きましたが、J185はフィンガーピッキング向け、J200はパワフルなコード・カッティング向けと差別化が図られているように思えます。
初期のJ185は、スキャロップ・ブレイシングのため、特にその印象が強いですね。

次は同じJ-185ですが、ナチュラル・フィニッシュの1957年製です。


51年製が19フレットだったのに対して、20フレットに仕様変更されています。
スキャロップ・ブレイシングでは無くなっていますが、やはり繊細な感じでフィンガー・ピッキングに合っています。

続いて1962年製のエヴァリー・ブラザースです。
当時の人気デュオ、エヴァリー・ブラザースのシグネーチャー・モデルで、大き目なダブル・ピックガードが特徴です。
J-185同様16 1/4サイズで、1962年から1972年まで488本製造されました。


これは初年度の1962年製ですが、初年度の製造本数は僅か2本…なお、ジミー・ペイジも1962年製を1本持っているそうです。
ちなみに、これはウオルナット・フィニッシュです。
さらにブリッジの形が通常と違い1970年代のJ200に似た形で、1950年代のJ200 のように透かし彫り加工がされています。

ボディ内にスタンプが押されていて、店員によるとリペアした職人ではないか?という事でした。



調べてみると、Arturo Valdez氏は、1960年代から活躍している有名ミュージシャン御用達のギター製作&リペアマンでした。
氏のリストには、ジョン・レノンのD-28やジョン・デンバーのギルド12弦のリペアなどと並んで、フィル・エヴァリーのEverlyBrothersプロトタイプをウォルナットにリフィニッシュした記録が残っています。
Arturo Valdez氏にメールで写真を送り、フィル・エヴァリー所有だったギターか?訊ねたところ、うちでリストアしたギターに間違いないが、フィルのギターか?については、個人情報に関わるので答えられない、という返事でした。

上記の翌年の1963年製のエヴァリー・ブラザースです。


一般にエヴァリー・ブラザース・モデルと言われると、この形をイメージするのではないでしょうか?
ブラック・フィニッシュで、大き目のダブル・ピックガード、星型ポジションマーク、ブリッジは独特なピンレス・タイプとなっています。
初期のモデルは、細くて背の高いブレイシングが採用されているため、意外と鳴りは良いです。

マイナー・チェンジ直後の1968年製のエヴァリー・ブラザースです。
ちなみに、マイナーチェンジをしても売れ行きは改善されず、マイナーチェンジ後の物は約150本製造されたと言われています。


トップはナチュラル・フィニッシュなのですが、サイド&バックはウォルナット・フィニッシュになっています。

店員はピックガードが小さい方が鳴りが良いと言っていましたが、初期の細くて高いブレイシングの物の方が鳴りが良いです。
一番鳴りが悪いのが、60年代中頃の大き目のピックガードで太いブレイシングの物…何故か、市場で良く見かけます。

最後は、エヴァリー・ブラザースの後釜で、J200の下位グレードとして登場した1972年製のJ100です。
結局、こちらも人気がでず1972年から1975年までの短命に終わり、製造本数は291本でした。


ダブルXブレイシング、固定ブリッジ、17インチボディですが、トップはシダー材でサイド&バックがマホガニー材という繊細なフィンガー・ピッキング向きです。
見た目も大人しく、このクラスのJ200の廉価版を求めるニーズとはかけ離れていました。


<番外編>
ギブソンがレコーディング・キング・ブランドでOEM製造したカーソン・ロビンソン・ジャンボです。
これは1939年〜1941年に製造されたモデルで、最終の1941年製です。


SJ100が16 7/8サイズのところ16 1/4サイズとやや小ぶり(ボディ厚も薄い)、サイド&バックはマホガニー製で、ラダー・ブレイシングになっています。



<(おまけ)ジャンボ・ボディあれこれ>