カマカ・ジャパンの謎


やはり日本人として気になるのが、カマカ・ジャパンです。
一体、誰が製造していたのでしょうか?


1965年頃のパンフレットをみると、カマカ・ジャパンのランナップはコア製の#100とkeikiのデラックスのkk15、そしてkeikiのスタンダードとしてナチュラル・フィニッシュのkk10とブラウン・フィニッシュのkk11が載っています。
しかし、現存するものをみると、それ以外にも色々な種類のものが存在したようです。


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カマカ・ジャパン製のデラックス・モデル(型番不明)とスタンダード・モデル(k 100)

カマカ・ジャパンの特徴といえば、ネックがカマカ・ハワイより太いラウンドグリップであることです。
この当時のカマカ・ハワイは個体差はありますが平べったいグリップで、最初は違和感がありますが、慣れると弾きやすい形状です。
一方、カマカ・ジャパンは個体差は少なく、他社のウクレレと持ち替えても違和感の無い形状です。
neck
左側がカマカ・ハワイ、右側がカマカ・ジャパン

よくカマカ・ジャパン製はペグのブッシュの形状が六角形(通常ハワイ製は鳩目型)という事も言われますが、例外も結構あります。
この点については、カマカ・ジャパン製のブッシュは六角形の物が多い、ぐらいに考えておいた方がよさそうです。
※カマカ・ジャパン社長夫人の証言から、この六角形ブッシュのペグはヱトーネジ(現在のヱトー商事)が製作したと思われます。
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日本製というと、本家より劣ったような感じを受けますが、作り自体はキッチリとしており、本家カマカ・ハワイより楽器としての質は高いと思います。
サウンド的には、やはり本家カマカ・ハワイに劣りますが、それも弾き比べなければ判らない程度であり、非常に良いサウンドです。
カマカを名乗っているだけに、一応カマカ特有のはサウンドは持っていますが、カマカらしさといった感じが幾分薄いのは否めないでしょう。


カマカ・ジャパン(デラックスモデル)のバインディング処理。
ベッコウ柄のバインディングと白黒の積層処理。サウンドホール周りの白黒パーフリングもキッチリ入っており、技術の高さが判ります。
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カマカによれば、1963年から1970年までの間、海賊版モデルの対策のため、Tokyo Stringed Manufacturing Co., Ltd.と共同でKamaka Japan LTD. を設立した事になっています。
色々調べてみたのですが、Tokyo Stringed Manufacturing Co., Ltd.がどのような会社であったかは判りません。

当時は楽器販売業者と製造業者が別の事も多く、Tokyo Stringed Manufacturing Co., Ltd.は楽器販売業者であり、実際の製造は別の製造業者だったとも考えられます。
「当時の日本の代表メーカーであるLUNAで製造されていた」という説がありますが、これについては「Lunaの謎」のページに書いたように、わーぼさんやMATTさんの協力により、誤っていることが確認できました。
また、MATTさんの情報によると「ケイキカマカは、遠藤さんと言う方が茨城県で工場を持って製造していたそうです。」とのことです。
※この件について詳しい情報を頂きましたので、別項「カマカ・ジャパンの謎<つづき>」をごらんください。


カマカジャパンのヘッドには、日本で組み立てられハワイでフィニッシュされた事を意味するシールが貼ってあることがあります。
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このシールをみると、Kamaka-Hawaii,incとなっているので、カマカが社名を変更した1968年以降のものと判ります。
この社名変更ですが、わざわざHawaiiと入れたのは、カマカ・ジャパンと明確に区別したかったからと思われます。
また、カマカ・ハワイには無い型番(k 100等)を示すシールが貼られている事もあります。
japan2



カマカが子供用に作ったkeikiモデルもほとんどカマカ・ジャパンで製作されました。
フィリピン・マホガニー製で安価に提供されましたが、ボディ・サイズやスケールは通常のカマカと同じで、特に子供用という感じではありません。
また、Keikiモデル以外のカマカ・ジャパンにもマホガニー製の物があります。

keikiのスタンダードとデラックス
keiki2keiki1

デラックスモデルは白いバインディングで、サウンドホールの縁にもバインディング処理されています。
それぞれkk 12とkk 15という型番のシールが貼られたものがあります。
kk12kk15

また、スタンダードにはデラックスと同様にブラウン・フィニッシュされたものもあります。
keiki3

桐太郎さん所有のブラウン・フィニッシュのスタンダードにはkk 13という型番のシールが貼られているそうです。
kk13
1965年頃のパンフレットには、ナチュラル・フィニッシュのKK10とブラウン・フィニッシュのKK11が載っているのですが、その後、KK10→KK12、KK11→KK13と型番の変更があったと推測されます。
なお、桐太郎さんは1966年7月に購入されたということなので、型番の変更はこれより以前に行われたようです。

また、小野さん所有のkeikiには、k・02という型番のシールが貼られているそうです。
keiki4k02

サウンドホールの縁にバインディング処理がありますが、ボディの周りにはバインディングが無いという珍しい仕様です。
小野さんによると、艶有りゴールドラベルでHawaiian Handmaideの文字があるそうなので、初期の物と思われます。

なお、当時はkk10と同様の仕様で、k・01という型番のシールが貼られた物もあったようです。
k01


keikiには、他に僅かながらパイナップルモデルも作られました。
pinekeiki

型番は不明です。(もし、ご存知の方がいらっしゃいましたら連絡してください)



keiki以外の通常のカマカ・ジャパンにもマホガニー製のものがあります。
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上記のデラックスモデルと同様にボディの周りにはベッコウ柄の3層バインディングがあり、パーフリングも白黒3層になっています。
また、カマカ・ジャパンとしては珍しく指板のエンドが斜めでなく、V字型に処理されています。

kk 17という型番のシールが貼られています。
KではなくKKという型番をみると、Keikiど同じ扱いだったのが判ります。
kk17

ちなみに、このウクレレ、サウンドホール内にピアノの様な楽器店の調律調整検査済証が貼ってあります。
これをみると日付が(昭和)43年5月13日になっているのが興味深いです。
楽器店に入荷した新品を販売前に調整したのでしょうか?
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カマカ・ジャパン製のテナーもありました。
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左側がカマカ・ジャパン製のテナーで、右側は比較のために並べた、同時期のカマカ・ハワイ製のテナーです。
現在のコンサート・モデルに似たヘッド形状やピン式のブリッジは、この時期の特徴です。
色合いで分かるように、ハワイ製がコア材を使っているのに対して、カマカ・ジャパンの物はマホガニー製です。
また、カマカ・ジャパンのボディの周りにはベッコウ柄の3層バインディングがあり、パーフリングも白黒3層になっており、高級感が漂います。
12フレットのポジション・マークがカマカ・ハワイが2個なのに、カマカ・ジャパンは1個なのが気になります。
ラベルは、カマカ・ハワイが艶無しゴールド・ラベルで、カマカ・ジャパンが艶有りゴールド・ラベル、どちらもHawaiian Handmadeと書かれています。
カマカ・ジャパンのヘッド裏には、kk 20という型番のシールが貼られています。
KKという型番から、Keikiのテナー版という位置づけだったのでしょうか。



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